伊藤忠商事 繊維カンパニー
「エンジニアでなくともDXは可能」現場主導の生成 AI ・データ活用をジーアイクラウドの最速サポートで実現した「Dataloom Project」

掲載日:

伊藤忠商事 繊維カンパニー様は、歴史と伝統を持つビジネスをさらに進化させるため、データドリブン経営を積極的に推進しています。その中核を担う「Dataloom Project」は、「DXは特別なもの」という既成概念を打破し、IT 専門ではないビジネスの現場担当者自らがデータ活用を内製化することを目指しています。 本事例では、いかにしてこの先進的な取り組みを推進したのか、そしてジーアイクラウドが戦略的パートナーとして、その挑戦を最速で実現したのかを紹介します。

伊藤忠商事株式会社 繊維カンパニー 繊維デジタル戦略室様
所在地:東京都港区北青山2丁目5番1号
代表取締役社長執行役員COO:石井 敬太
設立:昭和24年 12月1日

伊藤忠商事株式会社 繊維カンパニー 繊維デジタル戦略室 / 市川 和海 様 繊維デジタル戦略室 / 室長 / 若谷 哲也 様 繊維デジタル戦略室 / マネージャー / 丸山 篤司 様 ジーアイクラウド株式会社 SIグループ / Salesチーム チームマネージャー / 森本 修平 SIグループ / Salesチーム / 小林千亜暉 SIグループ / Salesチーム / 小椋 亮 セールス&マーケティンググループ / グループマネージャー / 松田 基数 (写真不参加) SIグループ / Salesチーム / 加賀谷 早織 (写真不参加) セールス&マーケティンググループ / Marketing Salesチーム / マネージャー / 武田 基樹

伊藤忠商事 繊維カンパニー 繊維デジタル戦略室の若谷様、丸山様、市川様にお話を伺いました。

プロジェクトの背景

繊維デジタル戦略室/ 室長  若谷 哲也 様
繊維デジタル戦略室/ 室長 
若谷 哲也 様

2020年7月に繊維デジタル戦略室が設立された当初は、コロナ禍で伊藤忠商事 繊維カンパニー傘下のアパレル小売企業などが運営するリアル店舗が相次いで閉鎖される状況があり、ECサイトの強化が主な目的でした。その後、生産領域のDXや、データ分析を使ったMD業務の高度化、粗利在庫の最適化、ERPの刷新、物流のDXといった領域に我々の業務が広がっていきました。
DXは地道な活動の積み重ねであって魔法ではないのですが、生成 AI というものは、デジタル技術の中でも、ある意味スマホと同じような“魔法の杖”であって、これを使って一気にこのDXを進めていこうという機運が高まっていました。ただ、繊維デジタル戦略室のメンバーは業務の知識はありますが、いわゆるシステム(IT)といった技術側のことにはまだ弱いところがありまして、これを進めていく中で我々と伴走してくれるパートナーを探しておりました。

当社選定理由

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繊維デジタル戦略室/ マネージャー
丸山 篤司 様

情報・金融カンパニーに社内出向していた時代に業務を通じて Google の有用性を強く実感していました。繊維カンパニーへ帰任した際、IT専門ではない自分自身が実際に取り組むことで、「DXは特別なものではなく、誰もが簡単に取り入れられるものだ」と証明できるという確信を得ました。また、ビジネスに近いところで実務に携わっている我々だからこそ気づける視点があると大きな可能性を感じました。
ジーアイクラウドへ相談した理由は、Google Cloud に特化した高い専門性を持つだけでなく、伊藤忠グループの一員であるという点です。ビジネスサイドの人間が主導し、「エンジニアではない社員でもDXに取り組む」という環境において、グループ会社ならではの事業・組織への深い理解と、お客様の目線に寄り添った技術と業務の両側面からサポートしてくれる柔軟性が、このプロジェクトの成功に不可欠だと判断したためです。

取り組み内容と成果

 

プロジェクトについて

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「Dataloom Project」は、繊維カンパニーのデータ活用環境をモダナイズし、データドリブン経営を促進することで、顧客価値の最大化を目指すことを目的に立ち上げられました。

  • プロジェクト名の「Dataloom」には、「データの織機(loom)」という意味が込められています。これは、これまで散在していた種々のデータを緻密に織り合わせると同時に、繊維業界の伝統と最新のデジタル技術を融合させ、ビジネスそのものを根底から進化させるという、戦略的なビジョンを象徴しています。

 

 

 

プロジェクトの進め方

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繊維デジタル戦略室/
市川 和海 様

一般的な案件では、要件定義に時間をかけてから本格的に開発を進めることが多いと思いますが、「Dataloom Project」ではその順序が逆でした。これは、生成AIの進化が非常に速く、従来のシステム開発のように要件定義に時間をかけてしまうと、その間に技術が進化し、定義した内容自体が意味をなさなくなることが多々あると感じたためです。
そのため、私たちは何よりもスピード感を重視しました。まずは実際に試作を行い、その後に「では設計図を書いてください」とお願いするアジャイルな進め方を採用しています。SNSなどで生成 AI に関する最新情報を見つけた際も、「とりあえず試してみる。できたらすぐに共有する」という機動的な姿勢を意識しました。

業務への落とし込みについては、開発チームだけで完結させず、実際に利用するグループ企業の社員に「こんなものができました」とデモを行いながら、一緒にブラッシュアップしていくスタイルを取っています。良い感触を得られれば掘り下げ、手応えが薄ければ一度未来に委ねるという割り切りを持って、まずはリリースしてみることを大切にしています。こうした小さな成功を前向きに評価してくれる組織風土も、この先進的な取り組みを支える重要な要素だと感じています。

ジーアイクラウドも、この私たちのスピード重視の姿勢に非常に柔軟かつスピーディに対応してくれました。アイデアは、ジーアイクラウドの技術力と実行力により、最短2日後、あるいは翌週には実用レベルの形(MVP:Minimum Viable Product)となり、すぐにユーザーに使ってもらう進め方を実現しています。

 

ジーアイクラウドとして意識した点

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SIグループ / Salesチーム チームマネージャー 
森本 修平

私たちが最も意識したのは、「スピードとプロアクティブな提案力」を徹底することでした。
特に生成 AI の領域は進化が極めて早く、今日採用した技術やモデルが数か月後には陳腐化する可能性を常に考慮する必要があります。そのため、私たちは単にいただいたご相談に対応するだけでなく、Google Cloud の最新情報を常にキャッチアップし、お客様のプロジェクトの目的に対して最適かつ最先端の技術をプロアクティブに提案し続けることに注力しました。
具体的には、毎週の定例会を通じて情報感度を高く保ち、ご相談があった際には、なるべく早く「カタチ」にすることを徹底しました。この迅速な情報共有と実行サイクルにより、お客様と共に変化の激しい AI 領域をリードし、プロジェクトを成功へと導くことができましたと考えています。

 

課題に感じられたこと

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当初、生成AIに対してネガティブなイメージがあり、それを払拭するのは正直かなり大変でした。「Excelすら使いこなせないのにAIなんて…」という苦手意識を持つ方も少なくありませんでした。この意識の壁を破るため、私たちは「使わないから分からないんです。使えば分かります。一度やってみましょう」と声をかけ、実際に触ってもらうことを意識しました。さらに、一般的な世の中の事例ではなく、我々自身の事例を集めた事例集を作成し、リアリティをもって生成 AI の有用性を啓蒙しました。

また、グループ内には20社近くのグループ企業があり、一斉に広く案内してもなかなか見てもらえず、聞いてもらえず、情報が伝わりにくいという課題がありました。そこで、私たちは1社1社に地道に足を運び、それぞれのビジネス形態に合わせて説明やデモの内容を調整しながら対応しました。どれだけ発信しても情報が一部にしか伝わらないという課題を感じたため、グループ企業ごとにキーマンを見つけ、その人に集中的に情報を提供し、その方から現場に広げてもらうという工夫もしました。実際に対面する方々は、デジタル専任の方ばかりではなく、EC担当者や経営企画、経営層の方など様々でしたが、特に対象を限定せず、感度の高い方、興味を持ってくれそうな方に共有することで、現場での活用が自然に広がっていきました。
もう一つ、生成 AI について分からないことがあっても、皆が相談してくれるとは限らないということも課題でした。これを解決するため、生成 AI 相談DAYを設け、「今日一日この会議室に私たちが常駐しているので、好きなタイミングで生成 AI の相談や、業務で困っていることなどを相談しに来ていいですよ」と呼びかけ、相談しにくい雰囲気を解消するよう努めています。
そして、相談者の業務を我々が深く理解することが非常に大切でした。最初は前提知識がないままヒアリングを行うのが大変でしたが、数をこなしてノウハウを蓄積していきました。もし外部のコンサルタントなどが入ってやろうと思ったら、ゼロから聞いて理解しなければいけないため、それだけで多大な業務になってしまいます。20近くのグループ企業を束ねる繊維カンパニー内部にあるデジタル戦略室が動いていることは、この多岐にわたる課題解決において極めて大きなメリットだったと感じています。

受賞について

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この「Dataloom Project」の成果は、外部からも高く評価されました。Google Cloud 主催の「AI Agent Summit ’25 Spring」で開催された「第3回生成AI Innovation Awards」において、繊維カンパニー経理部門との共同プロジェクトで開発した「印紙判定アプリ」が優秀賞を受賞しました。
このような栄誉ある賞を戴けるとは全く思っていなかったため、大変驚きましたが、外部から評価されたことは非常に誇らしいことだと感じています。そして何より、この対外的な活動が、社内推進に大きな効果をもたらしました。受賞をきっかけに、社内広報に話をする機会が増え、ニュースを見て興味を持ってくれる人が増えるなど、社内でのDXへの関心が格段に高まったことを実感しています。

 

 

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SIグループ / Salesチーム 
小林千亜暉

印紙判定アプリを開発したジーアイクラウドエンジニアの声

印紙判定アプリの開発にあたり、最も重視したのは「社員の方誰にでも気軽に触っていただく」という目的でした。そのため、開発手法としては、機能の追加などを最小限に抑え、小さくリリースしてフィードバックを得るサイクルを繰り返しました。また、専門知識がない方でも直感的に操作できる高いユーザビリティを重視し、難しいデザインを避けて極力シンプルなUI/UXを追求しました。この「使いやすさ」への徹底したこだわりと、開発スピードの徹底が、印紙判定アプリが短期間で現場に定着した大きな要因であると考えています。

 

 

 

 

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セールス&マーケティンググループ / グループマネージャー 
松田 基数

ジーアイクラウドが描く未来

この度、伊藤忠商事 繊維カンパニー様という歴史ある組織のデータドリブン経営の第一歩を、「Dataloom Project」としてご一緒できたことを心より光栄に思っております。今後も、進化の速いAI・クラウド技術の最新動向を見据えながら、ジーアイクラウドは最も信頼できる戦略的パートナーとして、繊維カンパニー様のビジネス革新に向けた挑戦を全力でサポートし、さらなる顧客価値の最大化に貢献していきたいと考えています。

 

 

 

今後の展望

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これまで、私たちは草の根運動を通じて生成 AI の可能性を広げてきましたが、次のマイルストーンとしては、すべてのグループ企業でトップダウンでのタスクフォースを立ち上げ、組織的な生成 AI 活用・DX推進を定着させることを目指したいと考えています。
最終ゴールは、グループ企業が自立的かつ能動的にDX、ないしは生成 AI を活用したビジネス変革を進められる状態、すなわち自己完結できる状態になることだと考えています。
現在は個人利用の事例がかなり増えてきたため、今後はそれをいかに組織利用へと広げ、組織的に使って定量効果を出していくというフェーズを目指します。そして、この成功体験を伊藤忠全社での生成AI 活用にも貢献していきたいと考えています。

ジーアイクラウドに対しては、単なるエンジニアとしての支援だけでなく、究極のゴールである事業変革に向かって一緒に目線を合わせてほしいと期待しています。事業を変革するためのデータ活用戦略などを共に追求することで、取り組みをさらに強化したいと考えています。そして、この繊維カンパニーで確立したアジャイルな成功モデルを、全社や他のカンパニーにもリードして広めてくれることを願っています。

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