シスメックス株式会社様
データ駆動文化の実践、BigQuery で実現する横断的な Healthcare データ分析基盤の構築

掲載日:

シスメックス様は臨床検査機器、検査用試薬ならびに関連ソフトウェアなどの開発・製造・販売・輸出入をしています。
シスメックス様では検査結果をはじめ多様且つ多量のデータを研究開発で取り扱いますが、機微情報故の厳密な管理や、個別最適によってサイロ化した結果、データの管理や2次活用の負担が大きくなっていました。
そこで、同社向けに高度なセキュリティ対策と高いユーザビリティの両立を目指した横断的なヘルスケアデータ基盤の構築をしました。

「ヘルスケアの進化をデザインする。」という企業理念の下、
血液や尿などを採取して調べる検体検査分野を事業の核としながら、
世界の医療課題解決に貢献することを目指し、
世界190以上の国や地域の人々の健康を支えています。

本店所在地:兵庫県神戸市中央区脇浜海岸通1丁目5番1号
代表取締役社長:浅野 薫
設立:1968年2月20日
連結従業員数:11,012名 単体:3,266名(2024年3月31日現在)

(左から)
シスメックス株式会社
テクノロジーイノベーション本部 / 陳 果様

ジーアイクラウド株式会社
営業グループ / 森田 大介
SI グループ / マネージャー / 川口 拓也
SI グループ / マネージャー / 森本 修平

シスメックス株式会社
テクノロジーイノベーション本部 / エグゼクティブエンジニア / 石原 直樹様

シスメックスの吉田様、石原様、陳様にお話を伺いました。

プロジェクトの背景

取締役 / 常務執行役員
CTO / 吉田 智一様

シスメックスではデータ活用に関して以下のような課題が存在していました。

  • ガバナンスデータの取り扱いと個人情報の問題
  • ビッグデータの活用と個人へのフィードバックのバランス
  • データの保証とセキュリティの確保

これらに共通することは本質的ではない部分に膨大な労力がかかってしまうことです。
個人情報の取り扱いやデータの保証、セキュリティの確保が個別で行われているため、プロセスやデータのサイロ化が起きていました。
そこで、課題に対処するために、全社的なデータを統合的に分析、管理する仕組みが必要だと考えています。 統合的なデータ管理の仕組みを用意することで、一貫性のあるガバナンスやデータの品質保証、
セキュリティレベルの確保ができ、データ活用においても機微データを安全に扱えるようになると期待しています。

組織的な観点からは、データサイエンス、システム実装、物理的なシミュレーションができる専門家を
中心とした組織作りが求められています。それらの専門家を一つの組織にまとめ、データをデザインし
活用する能力を向上させたいという思いがありました。

プロジェクトの目指すゴール

プロジェクトの目指すゴールは多岐にわたりますが、当社として取り組みたいのは医療分野への展開です。セルフ・パブリックヘルスの概念を取り入れ、
各病院から提供されるデータを活用し、パーソナルデータと組み合わせることで、個別最適化されたサービスや治療法の開発を目指しています。
さらに、ビッグデータを利用して、病気の早期発見や予防に繋がる新たな指標やアルゴリズムの開発も欠かせません。
これら、データに基づいた医療のサジェストや、「メディカル DX」に近い自己変容に繋がるシステムなど、より適切な医療提供に役立つよう実現していきたいですね。

データ分析プロセスの確立も重要です。
データ収集、データ解析、アルゴリズム化の3段階で進め、各段階でのセキュリティとデータクオリティのチェックは重要なポイントとなります。

ただ、まだまだスタート段階であり、このプロジェクトは、内部向け活用から外部展開へと段階的に進めることを計画しています。
製造プロセスや注文・受注管理プロセスでのデータ活用、さらには予測的な分析といった部分も含め、まずは内向きの生産性向上から始め、基礎力をつけて外部展開を検討していきます。
最終的に、このプロジェクトを通じて、当社はデータ活用の基盤を整備し、新たな価値創造につなげることを目指すと同時に、データの倫理的利用や個人情報保護にも十分配慮しながら、イノベーションを推進してまいります。
特に医療分野においては、個人の健康増進と疾病予防に貢献する革新的なソリューションの開発を通じて、社会全体の健康水準の向上に寄与することを目指しています。

Google Cloud 選定理由

Google Cloud の選定には、複合的な要因と明確な理由がありました。
主な理由としては、コストパフォーマンスの高さと即時的な成果の実現性が挙げられます。
我々のプロジェクトは迅速な結果を求めており、この点で Google Cloud が現実的かつ効果的な選択肢だと判断しました。
BigQuery のような開発者の生産性を大幅に向上させる優れたサービスや、研究者向けの多種多様な既製のライブラリやモデルがサポートされている Vertex AI など、生産性向上に大きく影響するサービスが揃っていることが即時的な成果をあげられると確信をもてました。

具体的な利点としては、周辺ツール群の充実性と優れたユーザーエクスペリエンスがあります。他のクラウドサービスと比較して、開発者にとっての使いやすさが際立っており、これが最短のアプローチにつながると考えました。
プロジェクトの要件として、開発者や管理者によるデータの容易な管理が重要でした。医療・ヘルスケアデータの活用にあたって、4つの V(量、速度、多様性、正確性)に対応しなければならないため、従来のデータ管理体制では対応が困難になっています。Dataplex は、データファブリックとして包括的なデータ管理を実現し、データガバナンスを強化することで、この課題解決に貢献します。

また、医療情報を扱うため、セキュリティ設定の簡便さは必須条件でした。
適切なユーザーコントロールとアクセスコントロールが容易に設定できる Cloud IAM 等を用いることで、セキュリティリスクを効果的に軽減できる点も、
ポイントとなりました。
さらに、Google Cloud は他のクラウドサービスとの連携が容易です。
社内では複数のクラウドサービスを利用していますが、それらを連携させるハブとしても機能させることができます。 これらの理由と要因を総合的に検討した結果、Google Cloud が私たちのニーズを最も満たすソリューションであると結論づけました。

ジーアイクラウド選定理由

当社が実現したいことについて、同業他社からジーアイクラウドさんのご紹介をいただきました。初期段階から親身な対応と専門知識に基づいた具体的な提案、Google Cloud に関する深い知見と豊富な経験を活かし、当社のニーズに合ったソリューションを提案していただいたことは大きな要因となりました。また、コミュニケーションも迅速かつ円滑に進み、強い信頼感が生まれました。

さらに、ジーアイクラウドさんの開発に対する姿勢も、当社の要望と合致していました。
初期段階から試作して仕様を詰め、トライアンドエラーを繰り返しながら改善していくという柔軟なアプローチは、当社が求めるスピード感と開発方式にぴったりでした。これらの要素が相まって、ジーアイクラウドさんに協力を依頼するに至りました。

システム概要

シスメックスのデータ活用を加速する「SDDP (Sysmex Data Driven Platform)」とその中核ツール「ganpati」の2つを構築しました。

SDDP (Sysmex Data Driven Platform)

SDDP は、シスメックスの多様なデータ活用ニーズに対応するために構築された、堅牢かつ柔軟なデータ基盤です。ビッグデータ処理に優れた
Google Cloud の BigQuery を中核に据え、周辺ツール群と連携することで、データの収集・蓄積・加工・分析・可視化までを一元的にサポートします。
SDDP の主な特徴は以下の通りです。

  • BigQuery のスケーラビリティにより、データ量の増加にも柔軟に対応が可能
  • BigQuery の並列処理能力により、大規模データの分析も高速に実行可能
  • SQL だけでなく、機械学習などの高度な分析手法も活用可能
  • 厳格なアクセス制御とデータ暗号化により、データの安全性を確保

アクセスコントロールシステム(通称:ganpati)

SDDP の中核ツールである ganpati は、データカタログとアクセス権管理機能を兼ね備えたアプリケーションです。
ganpati の主な機能は以下の通りです。

  • SDDP 内のデータ資産を一元管理し、データカタログとして検索・参照が容易
  • アクセス権申請・承認: データへのアクセス権限を適切に管理し、セキュリティを強化
  • 申請履歴を記録し、ガバナンスを強化

アーキテクチャ図

システム導入によるメリット

テクノロジーイノベーション本部
陳 果様

シスメックスでは、全社横断のデータ基盤「SDDP (Sysmex Data Driven Platform)」を導入し、データ活用と業務効率化において成果があげられるようになると考えています。

データ共有の効率化とアクセシビリティの向上

従来は必要なデータを探すために担当者間で情報伝達を行う必要がありましたが、SDDP の導入により、データへのアクセスが容易になり、情報共有が効率化されました。迅速な意思決定と業務プロセスの改善が可能となります。

データ管理のトレーサビリティ確保とガバナンス強化

SDDP のアクセス権管理機能により、データへのアクセス履歴を自動的に記録できます。データ管理の透明性が向上し、コンプライアンス遵守を徹底するとともに、権限申請・承認プロセスを電子化し、従来の人的作業による遅延を削減できるようになります。

データ管理品質の均一化と向上

SDDP では、データ管理の品質が個人に依存することなく、システムによって担保されるようになります。
データ品質のばらつきが解消し、データ活用の信頼性向上が狙いです。

オペレーション負荷の軽減と生産性向上

データ検索やアクセス権申請などの管理業務を自動化することで、従業員のオペレーション負荷が大幅に軽減されると期待しています。従業員はより付加価値の高い業務に集中することができます。

今後のジーアイクラウドへの期待

テクノロジーイノベーション本部
エグゼクティブエンジニア
石原 直樹様

今後の機能拡張と利便性向上

SDDP はすでに社内運用を開始しており、利用者のフィードバックを反映しながら、さらなる利便性向上を目指しています。

  • データ収集者向け: データ登録・更新作業の効率化、データ品質管理の強化
  • 利用者向け: 検索機能の強化、多様なデータフォーマットへの対応、パーソナライズされた情報提供
  • 分析者向け: 高度な分析機能の提供、分析結果の共有・可視化機能の強化

これらの機能拡張により、SDDP は、より多くのユーザーにとって価値のあるサービスへと進化していきます。

パーソナライズ化されたヘルスケアデータ基盤の構築

SDDP の最終的な目標は、ユーザー個別に最適な情報を提供できる、パーソナライズ化されたデータを提供できるデータ基盤となることです。ユーザーが求めるデータを的確に提供、レコメンドすることにより、さらなる研究開発の生産性向上や新たな発見によるイノベーションの創出が期待できます。

この目標に向かってジーアイクラウドとの連携を強化し、SDDP のさらなる進化を目指していきます。

主要採用サービス

  • アクセスコントロールシステム(通称:ganpati)
    • Cloud Run
    • Cloud SQL
    • Cloud Load Balancer
  • SDDP ( Sysmex Data Driven Platform )
    • BigQuery
    • Dataplex

ご質問・ご相談等お気軽にお問合わせください。

Google Cloud 、 Google Workspace および Looker は Google LLC の商標です。